赤ちゃんは抱っこを求める

 ヒトの赤ちゃんは生理的に早産であると言われています。ゾウやウマなど、生まれてすぐに歩き始める動物と比べても、未熟であるのが分かりますね。かといって、犬や猫のように巣で大人しく泣かずに待っていられる動物でもありません。

 ヒトの赤ちゃんは、サルと同じく、親と一緒に行動する動物行動学でいうと授抱性(じゅほうせい)に分類されます。文字通り、授乳と抱っこで育つんですね。

 「抱きぐせがつく」と昔から言われていた言葉ですが、親と一緒に行動するヒトの赤ちゃんにとって、「どこかに置かれている状態」というのは不安でいっぱいの状態です。赤ちゃんが安心感を求めて泣くのはごく自然な、本能的なことなので、「抱きぐせ」というのはおかしな気がしますね。

 生まれてから首すわり位までの期間を、第4の妊娠期間とする考え方もあります。ヒトの赤ちゃんは未熟な状態で生まれてくるので、未熟なうち(首すわり前)はお腹の中と同じように育てましょう、ということです。ただ、胎児と新生児は呼吸の方法が異なるので、抱っこの方法にも安全を確保するポイントがあります。

スキンシップの効果

 皮膚の感覚は、最も早く発達します(胎児期の初期11w〜)。五感の中で最も重要なのは触覚で、自分の体を認識し、生命を維持します。

 早産児の研究では、皮膚に触れると呼吸や心拍が安定し、体温が上昇し、体重が増加するなど、身体の重要な生理機能を安定させることが立証されています。

 出産後すぐにお母さんの胸に直接抱いて密着させることで、赤ちゃんが落ち着き、親子の絆が高まり、授乳もスムーズに始まることが分かっています。

 大切なことは、抱っこして、肌がふれ合うことです。

縦抱きのメリット

新生児の縦抱き

 胎児はへその緒を通じて、栄養や酸素をもらっていますが、お腹の外に出ると肺呼吸をしなければなりません。
胎児のように丸まった姿勢は、赤ちゃんの呼吸を妨げるので、緩やかなカーブにしてあげましょう。
 縦抱きでひらがなの「し」に近いカーブで、しっかりと肩甲骨〜腰までまんべんなく支えてあげると、背中の丸まりすぎを防ぐことができます。

 また、縦抱きは股関節の健全な発育を促します。新生児は体の全ての関節が軟骨であり、とてもデリケートです。
足をぎゅっと曲げた「M字」ポジションは最も股関節に負担がかからず、そのポジションで抱っこをすることで股関節の形成不全を予防することができます。足をピンと伸ばした姿勢は赤ちゃんにとって負担が大きいのです。

 縦抱きは赤ちゃんがお腹側に体重をかける経験を積むことができるので、その後の寝返り、うつ伏せ、ずり這い、はいはいといった発達過程に効果的につながります。

 ヒトの赤ちゃんは授抱性なので、生まれつき親にしがみつく能力を持っています。手や足の把握反射、モロー反射などが例です。しがみつく活動は、体幹の発達を促し、自分の体を自分でコントロールできるようになっていきます。

 首すわりは平均3ケ月位ですが、3ケ月になって突然首がすわる訳ではなく、自分で頭を支える練習をして徐々に筋肉が発達して、コントロールができる、つまり首がすわるという状態になります。

 首すわり前の赤ちゃんでも、養育者の体を両手で押し、肩甲骨のあたりをしっかり支えてもらっていると自分で頭部を動かすことができます。頭が後ろにガクンとなったり、左右に激しく揺れたりしないように注意が必要ですが、前述の適切なサポートがあれば縦に抱くことは問題ありません。
 世界のほとんどの国は、新生児から縦抱きをします。 

 抱っこやおんぶされる赤ちゃんはその都度、五感や筋肉への刺激を受け、その刺激は神経細胞同士が結合し脳の発達へとつながります。
 また抱っこする大人と密着して動きを共にすることは、運動能力やバランス感覚の発達にも効果的です。